あんの日記

不定期更新

日記『今』を、小説っぽくしてみた。

 

三人称で主人公を「あん」に。


あんは昨日、いや正確に言えば今日、上手く眠れなかった。
重度の睡眠障害、必死の努力も虚しく2時間睡眠でバイトへ行った。バイトに行く前は
「もう無理!!私死んじゃうかも!!休む!!」
等々騒いでいたのに、流石勤続7年の勘、案外平気なもので
「私もまだ捨てたもんじゃないな」
なんて一人ごちるあんだった。


そんなあんは、バイトをなにやら物凄い頑張っていた。しかし残念ながら仕事を頑張ったのではなかった。バイト、というか単純作業をすることで集中力が上がることをあんは経験で知っていた。それを利用して、あんは考えたいことをいつも考える。

「私が私の所まで下りていくのを感じる。
 私は何故私なの?ねぇ貴女は知っているんでしょう?
 私は私の全てを知っているのに、私は何も知らないの。
 この働き者の大きな手すら、私には自分のものとも思えない。
 きっと…何か、大きなものの呼吸が私の体に規則的に
 息を吹きかけていて、その風のせいで私は動いて見えるだけなのね」

そう考えた時、あんはなんとなくそれが癪に感じた。あんはたとえ指一本でも良いから自分のものにしたいと願うのに自分はただの傀儡、操り人形だという結論。では私は、私が憤慨しなくちゃいけないのはどうしてなのだろう?あんは途方もなく落胆してしまった。

 


昨日、いややはり今朝、あんが眠れずに困っていた時に
「そうだ!何か温かいものを食べれば眠れるかも知れない!」
と彼女は思いついた。それは実際に合っていて、温かいスープが胃に入ったあんは満足し、安心し、幸福を感じた。


徐々に眠たくなってくる中で、あんは以前の日記に
「私はもう幸福を感じることができない」
と書いたことを思いだした。しかしいま彼女はまるで幸福であった。

「多分コツがいるんだわ。きっと何も考えない事ね」
あんは本当にスルリと都合よく幸せを受け入れてしまった。憐れなり過去のあん達よ。君たちの苦しみは今ここにて真っ白に塗りつぶされてしまった!

 

…ともあれ、あんの欲しかった『幸せ』とは苦労して得るものではなかった。彼女はずっと、仕方のないことだが、勘違いをしていた。『幸せ』とは感じることだ。そしてあんはまるで当たり前のように幸せを享受して眠った。…たった二時間だとしても。
 

 
゛『幸せ』とは感じることだ。″
その言葉は、その日のバイト中あんの頭の8割方を占めた。何故ならあんは幸せになりたかったのである。バイトをしている今、まさに今、Nowである。あんは人生が詰まらなかった。一番つまらないのはバイトの時間であった。そして賢いあんは人生が詰まらないのは自分が詰まらない人間だからであることも知っていた。(本当は漫画本で読んだ。)

 


話は戻るが、あんが先から仕事中に頑張っている事。それはまさに「つまらない自分を変えること」と言っても良かった。あんは長年の経験で自分を変える方法をなんとなく知っていた。言葉でノックする。揺さぶる。叩き起こす。以上。

(尚、あんがその足場に立つまでにどれくらいの月日と憂鬱と苦悩を捧げたかについては割愛するが、筆者の私は涙なしには思いだすことすらできないという事を記しておく)


あんは何かをつかもうとしていた。『それ』はずっと欲しかったものだったけれど名前も形も色も匂いも知らなくて、でも『それ』はなんだか今日あんの近くにある気がしていた。

「名前を付けるとすれば…『それ』は

…きっと『今』のことなのだわ!」

あんはもう瞬間でそう結論付けてしまった。何故って、あんはいつも『過去』か『未来』のことを考えている自分に気が付いたからだった。だって『今』に目を向けたところで、そこはいつでも伽藍堂だったのだから。それに『今』なんてものはアノTwitterで「Now」と呟いた時点ですでに『過去』になる程度には足が速いんだもんな、とあんは一人で納得した。


「そしてその『今』こそが『私』なのだわ」
あんの欲しい『私』、あんが生きたい『私』。誰にも捕まえられない『今』と『私』はとても良く似ているものなのだ。きっとそうなのだ、とあんは思った。仕事中に。思ったほど時間は経っていなくて、あと2時間もシフトが続くことにあんはうんざりした。

 

あんは更に考えてみる。(本日のレジのバイトは思ったよりも暇であった)『今』を生きる、なんてことはとても難しい事なのだろう。あんは…というか人間は皆、後悔と思い出に浸り『過去』に生きるか、希望と不安を抱いて『未来』に生きる生き物である様にあんは思うのである。本当の意味で、(私の様に見失っていることに気が付いたりしなければ!)『今』に目を向け『今』を生きる人間は少ないのではないだろうか。あんはほんの少しだけ、その自分のものとも感じられない両手に『今』を感じた気がした。それは水のように、風のように、たださらさらと通り過ぎていくものであんは自分がそれを良く知っている事を思いだしたのだった。

 


「もしかすると私の『今』は『幸せ』ではないのかもしれない。
 だって私、『今』を見ることを避けているもの。…怖いのよ。
『今』を生きられるってのはきっと素晴らしい事だろうと思う。
 でも私は…とても怖い。
『今』はひょっとすると『未来』より未知数だから。
 きっともう過ぎた美しい『過去』やまだ見ぬ希望に満ちた

『未来』に生きた方が幸せなんじゃないかしら…」

 
でも一方であんは『それ』が欲しくてたまらない自分を感じていた。『それ』は自分の主導権。イニシアチブ。私は私であるという感覚。あんは欲しい。喉から手が出るほどに。どんなことをしてでも。

 『今』が欲しい。

 

 

 
 キット イズレ テニ ハイルヨ。


名も知らぬ誰かの、もしくは愛しい貴女の、そんな言葉を何処かで聞いた気がしたあんであった。

 

 

 

 

小説の上手い人にシルクタッチで掘ってもらった↓

昨日、いや正確に言えば、今日。あんは、ぐっすりと眠ることができなかった。重度の睡眠障害にもがいた夜、明け方。必死の努力も虚しく、結局寝られたのは2時間程度だった。行き過ぎた睡眠不足でバイトへ向かう。
そんなとき過去の彼女であれば「もう無理!!私死んじゃうかも!!休む!!」などとバイトに行くと前に、そう騒いでいたのだが、流石に勤続7年ともなると、案外平気なようだ。
「私もまだ捨てたもんじゃないな」などと一人ごとをもらす。

この日のあんは、睡眠不足も祟り絶不調。そんな状態でありながら、バイトは物凄く頑張っていた。しかし、あんが頑張っていたのは「バイトそのもの」ではなく「考え事」だった。あんは、単純作業をすることで集中力が上がることを自覚しているらしく、ほぼ単純作業ともいえるそのバイトのさなかは、その集中力を思考へと注いでいる。


『私』が私の所まで下りていくのを感じる。
『私』は何故私なの?ねぇ貴女は知っているんでしょう?
『私』は私の全てを知っているのに、私は何も知らないの。
この働き者の私の大きな手の運動すら、私には自分の意思によるものと思えない。
きっと……何か、大きなものが私の体に規則的に息を吹きかけていて、その風に揺られて私は動いて見えるだけなのね。


そう考えながら、下唇をかみしめる、あん。
たとえ指一本でも良いから自分の支配下に置きたい。そう願っても、自分はただの傀儡、操り人形だという結論に、自ら達してしまう。

「私が憤慨しなくちゃいけないのはどうしてなのだろう?」
あんは途方もなく落胆してしまった。

 

書き手のオリジナリティは確かに大事だけど

大事なのは読者にちゃんと読んでもらうことだから

読みやすさは本当に大事なんですよね。